今週の風の詩
第4041号 馬と新幹線(2026.7.26)
馬と新幹線
阪井春水(ペンネーム)
子どもは苦手だった。
電車で騒ぐ幼児を見かけると、つい眉をひそめてしまうタイプだった。
けれど自分が父親になると知った日から、すべてが変わった。育児の本を読んだり、インターネットで調べものをしたりして、幸せだがソワソワした十月十日を過ごした。
最近のエコー検査では、胎児の表情がなんとなくわかることもある。
目を閉じている顔を見て「どこか似てるかも」と無理やり共通点を探すこともあった。
赤ちゃんをかわいいと思う気持ちには、ちゃんとした名前があるらしい。「ベビースキーマ」と呼ぶそうだが、そんなこともはじめて知った。
令和五年の年末に息子が生まれ、元気に育っている。
一歳を過ぎたころから、少しずつ言葉も出てきた。
「親をどう呼ばせるのか」という問題が浮上したので、妻と話し合って「お母ちゃん」「お父ちゃん」に決まった。
ところが最初に具体的な単語を覚えたのは「てーび(テレビ)」「きゅーきゅちゃ(救急車)」「まんま(ごはん)」である。
テレビをつけてほしいときなど、リモコンを指さして「てーび」と言うのだから、観察力には感心してしまう。
ある日、ついに息子が私を指さして言った。
「しんかんせん」
「お父ちゃんよ」と妻が何度教えても、なぜか修正されない。
「しんかんせん!」
そんな息子の名前の一部には「駿」の字を入れた。
広くて険しいこの世界を、駿馬のように駆けぬけてほしいと願いを込めた。
父も負けていられない。
「しんかんせん」は明日も家族のために走るのだから。
電車で騒ぐ幼児を見かけると、つい眉をひそめてしまうタイプだった。
けれど自分が父親になると知った日から、すべてが変わった。育児の本を読んだり、インターネットで調べものをしたりして、幸せだがソワソワした十月十日を過ごした。
最近のエコー検査では、胎児の表情がなんとなくわかることもある。
目を閉じている顔を見て「どこか似てるかも」と無理やり共通点を探すこともあった。
赤ちゃんをかわいいと思う気持ちには、ちゃんとした名前があるらしい。「ベビースキーマ」と呼ぶそうだが、そんなこともはじめて知った。
令和五年の年末に息子が生まれ、元気に育っている。
一歳を過ぎたころから、少しずつ言葉も出てきた。
「親をどう呼ばせるのか」という問題が浮上したので、妻と話し合って「お母ちゃん」「お父ちゃん」に決まった。
ところが最初に具体的な単語を覚えたのは「てーび(テレビ)」「きゅーきゅちゃ(救急車)」「まんま(ごはん)」である。
テレビをつけてほしいときなど、リモコンを指さして「てーび」と言うのだから、観察力には感心してしまう。
ある日、ついに息子が私を指さして言った。
「しんかんせん」
「お父ちゃんよ」と妻が何度教えても、なぜか修正されない。
「しんかんせん!」
そんな息子の名前の一部には「駿」の字を入れた。
広くて険しいこの世界を、駿馬のように駆けぬけてほしいと願いを込めた。
父も負けていられない。
「しんかんせん」は明日も家族のために走るのだから。




